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CXOが語る、デザイナー・デザイン組織における発信の必要性——note designer meetup

noteで「#デザイン」と検索すると、2019年12月現在で3.1万件もの記事がヒットし、「#デザイン記事まとめ」マガジンには、4,000件弱もの記事がキュレーションされている。いまやnoteにおいて「デザイン」は一大ジャンルとなりつつある。

ただ、デザイナーが情報発信する意義とは何か。また、そのために求められる能力とは。この問いと向き合うべく、これからのデザイナーに求められる情報発信のあり方を考える「note designer meetup」が開催された。

イベントでは、前半にnoteを使って情報発信している4人のクリエイターによるライトニングトークを開催。後半では、メルカリ、dely、ピースオブケイクの各CXOによる鼎談が実施された。

本記事では後半の鼎談部分を紹介する。

(前半はこちら

各々の背景から語る、情報発信が求められる理由

LTの後は、発信に積極的に取り組むCXOによる鼎談がおこなわれた。

登壇したのは、メルカリCXOの井上雅意氏、delyCXOでBasecampCEOも務める坪田朋氏、そして、noteを運営するピースオブケイクでCXOを務めるTHE GUILD深津貴之氏の三名(※冒頭写真左から、深津氏、坪田氏、井上氏)。

最初に語られたのは、各々が情報発信をはじめた経緯だ。組織として個人として、それぞれバックグラウンドは異なるものの、一貫して狙いを持ち発信する姿勢の重要性が語られた。

井上氏は、メルカリのデザインチーム自体の認知に課題を感じていた。

井上:これまでメルカリのデザインチームは、積極的に情報発信をしてきませんでした。全社ではメルカンをはじめ多様な発信をしていますが、デザインチームに限って言えば、内部で何が行われているかもわかりづらく、採用面でも負が生じていました。そこからさまざまな手段で発信を試していったんです。結果、ここ1〜2年ほどで、状況が変わってきた実感があります。

メルカリはnote上で「Mercari Design」というアカウントを運用。2019年12月現在で20本と本数は決して多くないものの、いずれもメルカリがいかにデザインに力を入れているかが骨太に語られている。

続く坪田氏は「社会との関係値づくり」が、発信の狙いにあったという。

坪田:僕はまったくお酒を飲まないので、普段からあまり飲み会にも行きません。ですが、人と会って関係性を構築しないと仕事上では不便なシーンもある。であれば、対面で話さずとも普段から積極的に情報を発信し、考え方を共有したり接点を生めばいいのではないかと考え、発信を続けています。

実際、坪田氏は2017年12月からnoteでの発信をはじめており、DeNA時代に培ったデザイン組織の話や、登壇した際のスクリプト、自社で取り組んできた事例やプロセスの紹介、各種デザイントレンドの話など、「デザイン」軸で質・量ともに優れた発信を続けてきている。

ここでの発信が案件の相談や登壇依頼等につながるのはもちろん、坪田氏自身がどのような思考をもつデザイナーかが垣間見えるのは、まさにその狙い通りといえるだろう。

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最後の深津氏は、前の二人とは少々経緯が異なる。というのも、同氏の場合デザイナーとして発信をはじめたのではなく、デザイナーになる以前からブログを書き、情報発信がキャリアを切り拓いてきた背景をもつからだ。

深津:僕がブログを書きはじめたのが2002〜3年頃。当時はデザイナーというよりもブロガーに近い立ち位置で、キャリアの節目にはいつも「情報発信」が関係してきました。

たとえば、大学時代につくったチャットがきっかけでFlashを用いたクリエイターになったり、ある日mixi経由で中村勇吾さんから「会社に遊びに来ない?」というメッセージをもらいthaに入ったりしたんです。

深津氏は「情報発信はアイデンティティの一部」と語る。実際、ピースオブケイクのCXOに就任以降、同氏の積極的な発信によって、noteが爆速で改善を重ねている認知を得ているのを見ても、その言葉は過言ではないだろう。

デザイナーが発信力を持つ意味

続けて、話題は「どのように組織が発信と向き合うか」へとシフトしていく。

各々、発進力を活かし採用や認知、案件の獲得、キャリアとさまざまな可能性を広げてきた経験者。その必要性は言うまでもない。それを個人ではなく組織としてどうやるか、または組織としての発信の在り方を各々の立場から語られた。

深津:noteは「つくる」「つながる」「とどける」というプロセスを重視しています。、だから社内でも「プロダクトをつくっているだけでは駄目なんだ」と話しています。単に「つくる」だけではなく、これまでの施策と「つなげて」、ユーザーにちゃんと「とどける」。そこまでやってやっと完成と考えているので、「つくる」だけでは全体の3割ほどに過ぎないですよね。

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深津氏の話を受け、坪田氏はdelyにおける発信を引き合いに出す。Basecampや個人としての発信とは異なり事業会社での発信は、行動が企業の意思を表すと捉えられかねない。その前提を理解しつつ、坪田氏は、ユーザーと向き合うための発信を重視する。

坪田:僕は「ちゃんと腹を括っている」とユーザー側に伝えるためにも、「坪田です」と基本的には名前を出すようにしています。名前を出すことは「途中で投げ出さない」というメッセージングにもなる。会社の規模やフェーズによっては、出すべきではないシーンもいずれは出てくるかも知れませんが、今のところは可能な限り個人名とともに情報を伝える意識をしています。

それに対して井上氏は、ユーザーからの信頼を獲得する上で、「実情を伝えること」が大事であると考えを述べる。

井上:とくに会社組織の場合は、内部で何をおこなっているかを、誤解なく等身大で伝えることが大事だと思っています。どうしても外に発信するときはカッコよく見せようとしがちなので、実情の泥臭さは伝わりづらくなってしまいます。ですから、「カッコつけることはやめようよ」「実際の状況を伝えよう」という話をしながら、意図的に実情を出す意識をしていますね。

インターネットに奉仕する感覚

イベントの終盤では、このイベントに参加し、組織ないしは個人として情報発信をはじめようというデザイナーに向け、各々からメッセージが伝えられた。井上氏からは、発信は単に外向けのコミュニケーションではないという点が語られた。

井上:外に向けたアウトプットは、内向きの効果があることは是非意識して欲しいです。とくに印象的だったのは、ロゴやフォントをつくったときの発信でした。当時は、わざわざLPをつくる必要はないという議論もあったのですが、業界内での存在感を出したりトンマナを規定する意味でも重要だと考え、あえて制作をしました。

結果、社外はもちろん社内からも反響があり、外向けのアウトプットが内向きにも効果を発揮する実感がありました。「メルカン」を運営する中でも、言われていたことではあったのですが、影響がおおきいものほど、「発信は内向きにも効く」と強く実感しています。

井上氏の発言を受け、坪田氏からは情報発信による「内向けの効果」を確実に得るためにも、社内との関係構築が重要だと語られた。

坪田:僕は、発信の理解はまず社内、その後に社外と意識しています。社内からの理解を得られないまま発信してしまうと、後々ダメージを受けることもあります。ですから、事前に周りを固めておく。日々気軽に情報を発信できる体制を整えつつ、結果が出たら日頃から共有します。すると、社内でも「応援しよう」という雰囲気が広がって支援をしてもらいやすくなるんです。

僕がdelyに入って最初にやったのは「エンジニア採用が困っています」というスライドをつくり、外に伝えていくことでした。これがしっかりと伸びたことで、応援してくれるようになりました。周りから固める意識は、組織で情報を発信していく上では意識していくべき点ですね。

それでは、井上氏や坪田氏が語った内容を踏まえ、発信者個人に求められる資質とはどのようなものなのだろうか? イベントを締めくくる流れの中で、深津氏は次のように語る。

深津:僕はnote以外にもさまざまな仕事をやっているので、よく色んな方から「どうしたらフォロワーが増えるんですか?」「メディアを立ち上げたんですけど、誰も読んでくれません」といった相談を受けます。そのときに感じるのは、ほとんどの人が「俺が言いたいことを言っている」「私が私の事情を書いている」という状態なんですね。。

むしろ僕は、情報発信者は「インターネットに奉仕する感覚で、情報を出すのがよい」 と思っています。ノウハウでも個人的な経験でもいいんです。「記事を書く前」と「書いた後」を見比べて、インターネットが1ミリでも良くなったと思えるか。「インターネットをよくすること」を最優先に考え、ついでに告知もするくらいの気持ちで発信する。そうすると結果的に、みんなにも読んでもらえる。だから僕は、情報発信の秘訣として「インターネットをバリューアップさせる感覚」をオススメしています。

[文]藤生新[写真]ピースオブケイク提供

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