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designing|デザインビジネスマガジン

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デザインの可能性を探究するメディア『designing』のnoteです。事業に寄与するデザインから、クラフト・クリエイティブ、デザイン思想・倫理、広義にデザインと捉えられる活動ま… もっと読む
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#インタビュー

「Design by People」で、社会に創発を実装する──コンセント・長谷川敦士

デジタルという手つかずの領域がそこにあっただけ——国内のデザイン領域における「開拓者」と言っても過言ではない実績を重ねてきた、コンセント代表取締役社長の長谷川敦士は、自らの歩みをこう振り返る。 90年代前半からWebデザインに携わりはじめ、同後半には国内におけるインフォメーション・アーキテクトの先鞭をつける。日本におけるインターネットの普及期だった2002年にコンセントを設立し、「デザインで社会をひらき、デザイン自体の可能性もひらいていく」をミッションに、「人々とともにつく

私的な“熱”こそが、創造性の名のもと才能をつなぐ——Featured Projects始動

「クラシカルデザイナーは、デザインシンキングを軽視して認めない傾向がある」 かつて、「Design in Tech Report(現・Resilience Tech Report)」の中でジョン・マエダは、ナターシャ・ジェンの言葉を引用し、デザインの分断を指摘した。 クラフトとビジネス、フィジカルとデジタル、個の才能と組織による仕組み……デザイン・クリエイティブの領域では、様々なスタンスやバックグラウンドを持つ者が存在し、その差異は可能性を広げる大きな要因のひとつとなる。

受け手を「信頼できていなかったのかもしれない」映像作家 cog石川将也が見る“優しいデザイン”

『ピタゴラスイッチ』『2355/0655』をはじめとするEテレの番組、大日本印刷の『イデアの工場』……2019年までクリエイティブグループ「ユーフラテス」に所属し、著名作品の数々に携わってきた映像作家・石川将也。 2020年に独立して以降も、21_21 DESIGN SIGHTで行われた「ルール展」に出品した『四角が行く』が文化庁メディア芸術祭優秀賞を受賞、『光のレイヤー』は同じくメディア芸術祭の審査委員会推薦作品に選出。目覚ましい活躍を遂げている。 「インタビューの参考

エンジニアと対等に議論して生み出すデザインは「衝撃的に楽しい」──PS5プロダクトデザイナー・森澤有人

2020年6月12日、世界中にある波紋が広がった。 かねてから噂されていた、PlayStation 5(以下、PS5)の詳細が発表されたのだ。 とりわけ注目を集めた点の一つが、その独特のフォルムだろう。白を基調とし、なめらかな曲面を中心に構成されたデザインは、従来の黒くて“箱っぽい” PlayStationシリーズと比較して、明らかに異質だった。 このデザインを統括したのが、ソニー・インタラクティブエンタテインメント(以下、SIE)に所属するシニアアートディレクター・プロ

ピープルマネジメントを超えて。デザインマネージャーの視座──Visional大河原陽平

「マネージャー」という言葉の意味するところを、一義に定めることは難しい。 事業成長に向け自分・チームを最適化するか、メンバーの可能性を開花させることを第一に置くか。プレイヤーとしての役割を一切捨てるのか、はたまた自らも積極的に手を動かして背中を見せるのか──。理想のマネージャー像は、語り手によって異なって然るべきだろう。 これはデザイン組織においても同様だ。あるべきデザインマネージャー像は、組織や人によって全くの別物になる。 そんな中、ひとつのあり方を提示してくれるのが

デザイナーは「未来の具現者」であれ——Visional HRMOSプロダクト本部長・萩原崇

いかにデザイナーが活躍しやすい土壌を生み出すか。 ことデザインに力を入れる事業会社において、この問いは重要課題の一つに上がるはずだ。それは「個々人の労働環境」というシンプルな話から「人事評価制度」「事業部メンバーとの関係性」、そして「経営・マネジメント層の理解」「企業文化」「組織構造」まで。大小さまざまなトピックに関連する。 この課題に取り組むにあたり、一つの示唆を与えてくれる先達がVisionalだ。国内でいち早くCDOの設置に踏み切り、独自にミッションや、採用や広報と

「わかりやすさ」を捨て、オルタナティブをデザインする——インフォメーション・デザイナー 櫻田潤

「インフォメーション・デザイナー」という肩書きからは少し意外にも思える、90年代のUKロックミュージシャンを彷彿とさせる風貌で、櫻田潤は現れた。 インフォグラフィックという概念が日本ではまだ広まっていなかった2010年から、海外のインフォグラフィックを日本に紹介するサイト「VISUAL THINKING」を運営してきた櫻田。2014年にユーザベースに入社して以来約8年間、NewsPicksをはじめとした同社のインフォグラフィック展開を牽引。経済メディアにおける「縦スクロール

ホワイトキューブではなく、日常の太陽光の下で映えるデザイン──TENT青木亮作

「もはや欲しいモノがなくなってしまいました」 自分が欲しいものばかりをつくってきたという、そのプロダクトデザイナーは冗談混じりにこう語った。 クリエイティブユニット・TENT共同代表の青木亮作がデザインするのは、調理器具やインテリア、文具といった生活に根ざしたものが中心だ。それらはシンプルな佇まいでありながら、新しい生活の予感を放っている。 TENT立ち上げから10年、ヒット商品をあげればキリがない。そこに共通するのは、生活の中で活躍するイメージが湧くことだ。青木自身も

「つくれないという呪い」を解くため、デザインを拡張し続ける──NOT A HOTEL井上雅意

「自分はずっと、“つくれない側”の人間だと思っていました」 照れくさそうにそう語るのは、“自宅にも別荘にもホテルにもなる”住空間サービスを提供するスタートアップ・NOT A HOTELのCXO、井上雅意。 外資系メーカーにて、携帯端末のUIデザイナーとしてキャリアをスタート。その後IT業界に足を踏み入れ、領域もUX、事業、組織へと拡大。直近ではメルカリのCXOも務めた。 そのキャリアを見ると、「つくれない」どころか、常にその領域を拡張しながら、「つくり続けてきた」デザイ

人とプロダクトの幸福な関係をデザインする──THE 米津雄介

「わからないんですが……」 「もやもやしているんですが……」 そんな前置きのもとに、丁寧に選ばれた言葉は信頼できる。 誰かが語った言葉を借用するのではなく、自分の中から言葉を生み出していくこと。THEというブランドを手掛ける米津雄介は、そんな「わからない」を使いながら、丁寧に言葉を生み出していく人物だ。 ちょうど10年前の2012年、good design companyの水野学、中川政七商店の十三代中川政七、PRODUCT DESIGN CENTERの鈴木啓太とともに

混沌の中、「私たちは何を教えるのか?」を問い続ける——サービスデザイン研究者・吉橋昭夫

「デザインという言葉だけをつかまえて定義しようとすると、難しいですよね。創造性……クリエイティビティのようなものは、そのコアにあるかもしれないですけど」 サービスデザイン研究の国内第一人者・吉橋昭夫は、静かに口を開く。 デザインとは何か、デザイナーはどうあるべきか。デザインの対象領域が拡大し、身につけるべきと言われるスキルも加速度的に増えている。その中、デザイン教育は何を伝え、どのような役割を担っていくべきなのか——この問いと向き合うべく、designingはデザイン教育

デザインすべきは、「誰一人取り残されない」ための“場”──デジタル庁CDO 浅沼尚

浅沼尚は考えていた。 「誰一人取り残されない、人に優しいデジタル化を」というデジタル庁のミッションを、どうすれば実現できるのかと。 大橋 正司、広野萌、横田結、高野葉子をはじめ、デジタルデザイン領域で名の知られる面々が参画したことでも話題となったデジタル庁。2021年9月の創設から半年、いくつかのサービスがリリースされ、その都度耳目を集めてきた。 デジタル庁CDOに就任してからおよそ半年、考え抜いた浅沼の足元には、徐々にではあるが歩むべき道筋が見えてきているという。氏は

Slackに学ぶ、「全員が高い責任意識を持つ文化」を育む情報流通のデザイン:連載「クリエイティブ組織の要諦」第4回

連載『クリエイティブ組織の要諦』では、デザイナーをはじめとしたクリエイティブ職の組織作りのヒントを得るため、注目企業にインタビューを重ねています。数々のデザイン組織立ち上げを支援してきたMIMIGURI 代表取締役Co-CEO ミナベトモミを聞き手に、組織デザイン/組織開発の両面からヒントを探っていきます。 第4回に登場するのは、『Slack』を開発するSlack Technologies, LLC(以下、Slack)です。『Slack』がどのようなプロダクトかは、もはや説

​​永吉健一×石川善樹|「共にいる」ことで実現する、みんなのためのデザイン

2021年10月に受賞作品が発表された、2021年度グッドデザイン賞。さらに議論を深めるため、受賞作の選定とは別の切り口からデザインの潮流を見出す特別チーム(フォーカス・イシュー・ディレクター)を編成した。「フォーカス・イシュー」では、課題や今後の可能性を「提言」として発表する準備を進行中だ。 フォーカス・イシュー・ディレクターを務める予防医学研究者の石川善樹が取り組むテーマは、「将来世代とつくるデザイン」。「『誰と』デザインしたのか」という作品の制作プロセスに注目すべく、