なぜ国内有数のSaaS投資家は、STUDIOにラブコールを送り続けたのか──One Capital浅田慎二×STUDIO石井穣
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なぜ国内有数のSaaS投資家は、STUDIOにラブコールを送り続けたのか──One Capital浅田慎二×STUDIO石井穣

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「一人だけ異質な存在感を放っていた」

Sansan、freee、Visional、グッドパッチ、ヤプリ──名だたるスタートアップをIPOへと導いた投資家・浅田慎二は、Salesforce Venturesのオフィスで初めてその人物に会ったときの印象をそう語る。

普段会う起業家たちとは異なる舞台を歩んできた人だと一目でわかる、存在感と雰囲気。言葉の端々から感じられる感性の豊かさと、ビジネスに対するバランス感覚。

「本気で世界を狙えるCEOだ」と直感した。

その人物とは、石井穣。IDEO、日本デザインセンター、グッドパッチといったデザイン業界の雄、そしてメルカリ、クックパッド、noteといった著名スタートアップのデザイナーたちに愛用されるノーコードデザインツール『STUDIO』を開発する、STUDIOのCEOである。

その出会いから3年半。

浅田は、アーリーステージのSaaSスタートアップを中心に投資を行うベンチャーキャピタル・One Capitalを創業。『STUDIO』は、全世界約20万人のユーザーに愛されるプロダクトへと成長していた。

「とにかく早く投資したかったです。待っていたら、どんどん伸びちゃいますから」

そして2022年1月。One Capitalを筆頭に、STUDIOはシリーズAラウンドで3.5億円の資金調達を実施した。出会いの日以来、浅田がSTUDIOヘ送り続けた熱視線が、ようやく実を結んだ瞬間だった。

敏腕投資家・浅田慎二はなぜ、そこまでSTUDIOに惚れさせられたのだろうか?

(Sponsored by STUDIO)

「日本にこんなにデザイン性の高いノーコードツールがあったとは」

コードを一切書くことなしに、本格的なWebサイトを制作できるデザインプラットフォーム『STUDIO』。その直感的なUIとカスタマイズ性の高さから、デジタル領域のトップデザイナーたちから絶大な支持を集めているプロダクトだ。

2017年4月にβ版がリリースされると、またたく間に全世界の注目を集め、『Product Hunt』で日本企業初のデイリーランキング1位を獲得。

そんなポテンシャルをいち早く見抜き、動向を追っていたのが、浅田であった。まだ国内で「ノーコード/ローコード」といった言葉は一切使われていなかった時期である。

浅田「もともと新しいツールを使ったり、自分でサイトをつくったりするのが好きで、『Product Hunt』に載ってくるようなプロダクトはしょっちゅう登録して触っていました。特に当時はSalesforce Venturesで、今や国内の代表的なアプリ開発のノーコードスタートアップであるヤプリに投資していたこともあり、『Squarespace』や『Shopify』といった海外の制作ツールを研究していた。そうして『国内にもこうしたツールがないだろうか』と調べていて出会ったのが、『STUDIO』だったんです。日本人でこんなにデザイン性の高いツールを作っている人がいるのかと、驚きました」

One Capital株式会社 代表取締役CEO/General Partner 浅田慎二

石井は『STUDIO』の良さについて「わかっていただける人には直感的に伝わるし、そうでない人にはどれだけ説明してもずっと響かない」と語る。

浅田はその前者だった。

浅田「シンプルさと奥深さが同居している、緻密なプロダクトだと感じました。シンプルさは、緻密な計算や試行錯誤を繰り返し、無駄なものを削ぎ落としてこそ生まれると思っています。『STUDIO』からはそのプロセスがありありと感じられ、一瞬で好きになりました」

すぐさま石井にコンタクトを取り、ミーティングを設定。その時の石井の印象について、浅田は「普段接する起業家とは明らかに違っていた」と語る。

浅田「まず雰囲気と服装から、多くのビジネスサイド出身の起業家と比べて、クリエイター気質で感性が鋭そうな方だなという印象を受けました。話す内容からも非常に豊かな創造性が感じられ、頭の中に描いた絵を共有し、直感的に理解できるような伝え方をされている。デザイン領域にすごくフィットした経営者だと感じましたね」

一方の石井は浅田に対して、「良い意味でのギャップを感じた」と話す。

石井「会う前の浅田さんのイメージは、“数字でゴリゴリ責めてくるすごいビジネスパーソン”。正直、ちょっと怖いとすら思っていました(笑)。数字ばかり見て、プロダクトをあまり重視しない投資家の方もいらっしゃいますから。でも浅田さんは、『STUDIO』のことをよく知ってくださっていたのが印象的でした。『使いやすさ』や『シンプルさ』の部分には特にこだわっていたので、そこを理解してもらえていて嬉しかったです」

STUDIO株式会社 代表取締役CEO 石井穣

浅田はこの初対面時から、「いつか必ずSTUDIOに投資する」と決めていた。

しかし、浅田が当時在籍していたSalesforce Venturesの投資基準は、ARR(年間計上収益)1億円以上。『STUDIO』は正式リリース直後というタイミングで、「今後も接点は持ち続けましょう」と初回のミーティングは終了した。

そして2020年にOne Capitalを創業すると、再び石井に連絡し、すぐさま出資の意向を伝えた。その時は既に、売上はOne CapitalがシリーズA出資の基準とする数字をとうに超えていたという。

一方STUDIOは、その間にさらにプロダクトを磨き上げ、着々とファンを増やしていた。

「浅田さんは定期的にプッシュしてくれて、タイミングさえ整えばぜひお願いしたいと思っていました」

シリーズAラウンドの投資を検討することになり、新たなビジネスパートナーを選ぶにあたって、「プロダクトへの理解」「グローバルで戦う意思」「ビジネスのノウハウ」という3つの基準を設けていたという石井。Salesforce VenturesのJapan Headとして全世界のスタートアップに投資した実績を持ち、これほどまでにSTUDIOに惚れ込んでいた浅田は、まさに理想の投資家だった。

この人となら、一緒に『STUDIO』の未来を描ける──そんな石井の浅田に対する信頼が、浅田のSTUDIOへの猛烈なラブコールと共鳴し、投資に結実したのだ。

原点は、Appleの衝撃的なユーザー体験 

出会ったときに感じた魅力こそ直感によるものだったが、もちろん浅田はSTUDIOにビジネス的な勝算も見出している。

会社が伸びる条件について浅田は、「プロダクト力とディストリビューション力が、自転車の前輪と後輪のような形で高速回転する必要がある」と語る。

まず『STUDIO』のプロダクトとしての強みは、圧倒的なクオリティだ。中でも既存のツールでは実現できなかった「高いカスタマイズ性」が、デザインのプロから多くの支持を集めている。

石井「クライアントは、テンプレートでは満足できないからサイト制作を外注するわけですが、それをプロダクト側で再現できるのがSTUDIOの強みです。最近は電通さんや博報堂さんにも導入していただいており、STUDIOを使えるデザイナーたちの協力も得たうえでクライアントワークにご活用いただく、というスキームができ始めています」

また浅田は、身近な場所でSTUDIOの熱狂的ファンと出会ったエピソードを挙げ、「エバンジェリストの存在から、プロダクトのクオリティの高さが伺えた」と語る。

浅田「ある投資先企業がデザイナーを探していて、グッドパッチでデザイナー特化のキャリア支援サービス『ReDesigner』を手がける佐宗さんに『誰かいい人いないですか』と相談したんです。そしたらミーティングの中で、グッドパッチではクライアントワークでも自社のサービスサイトでも『STUDIO』を使いまくっている、とおっしゃっていて。採用支援の話をするつもりが、その後もずっと『STUDIO』の話をしているんですよ(笑)。これだけ愛されるプロダクトは絶対伸びるなと」

『STUDIO』がこれだけ支持される背景には、CEOの石井と創業者の甲斐啓真(現CPO)がいずれもデザイナーとしてのバックグラウンドを持ち、リリース以来プロダクトを磨き続けてきたという積み重ねがある(STUDIOが創業以来、いかにプロダクトにこだわり続けてきたかの道のりについては、こちらの記事で紹介している)。

浅田はSTUDIOのプロダクトドリブンな経営姿勢について「それこそがカスタマーファーストであり、本来あるべき姿」だと語る。

浅田「日本のスタートアップの場合、CEOはビジネスサイドの人がほとんど。それ自体は別に悪いことではないですが、結果としてセールスファースト、言い換えれば売上ファーストになりがちです。一方STUDIOは完全にプロダクトファースト。それはカスタマーファーストということでもあります。顧客があって、プロダクトがあって、それから売上というのが、本来あるべき順番。そういう意味でSTUDIOは、非常に健全ですよね」

何が石井をプロダクトの探求へと駆り立てるのか。

そこには「使っていて楽しいものを」という、石井のデザインに対する価値観がある。

デザインにこだわるようになったきっかけについて、石井は初めてMacbook Airを使ったときのことを振り返る。

石井「それまでコンピュータには全く詳しくなくて、当たり前にWindowsを使っていました。しかし、初めてMacbook Airを使ったときに『なんて使いやすく、美しいんだ』と衝撃を受けて。とにかく、触っているだけでとても楽しかったんです。その感覚が今でも原点になっていて、『使っていて楽しいものをつくれる』のがデザインの力だと思っています。見た目だけでなく、体験全体がデザインの対象領域。『STUDIO』もそうしたプロダクトであるべきだと捉え、日々改善を重ねています」

聞けば、自身も「Apple信者だ」という浅田。デザインに対する根本的な価値観を共にする二人が、共鳴するのは必然だった。

浅田「“使いやすいもの”って、全てにおいて大事だと思うんですよ。グローバルの競争環境では、『デザイン』という単語自体が『経営』や『プロダクト』と同義の、あって当たり前のもので。わざわざそこだけを抽出して『デザインは〜』と語る必要性は、もはや見たらないと考えています」

「日本独自の発注文化」をハックし、STUDIO経済圏を築く

ビジネスが成功するためのもう1つの条件──ディストリビューションはどうだろうか。

浅田は『STUDIO』を“日本版Squarespace”と表現したが、それはイコール、強大な資本力を持つ海外のプロダクトに取って代わられるリスクがあるともいえる。その中でカギを握るのは「日本独自の発注文化」だという。

浅田「日本には“Webサイトは外部の制作会社に全てお任せするもの”という価値観が根付いています。スタートアップですら、コーポレートサイトや採用サイトを当たり前に外注する。海外では自社でつくるのが一般的なので、これは日本独自の文化です。制作会社は星の数ほどあるため、発注自体は簡単にできますが、サイトを1から開発するのでその分、高額なのです。規模にもよりますが、平気で数百万〜数千万円かかってしまうこともある。さらにサイトの完成後も更新や改修のたびに追加コストがかかったり、保守費用を取られたりする。金額は小さいかも知れませんが、心理的に嫌ですよね。ここにチャンスがあるわけです」

どれだけ操作性が優れていても、「Webサイトは外注するもの」という価値観がある限り、一定以上のデザインクオリティを求めるユーザーは『STUDIO』のようなノーコードツールに辿り着くことすらできない。そして文化とは、そう簡単には変わらないものである。

ならばこの発注文化を逆手に取って、まずは制作会社にSTUDIOを普及させるべきだ。STUDIOを導入することで、コストを抑えながらハイクオリティなサイトをつくれることが伝われば、シェアは確実に伸ばせる。この考えを浅田が石井に話したとき、既にSTUDIOはそのための取り組みを始めていた。

STUDIOを活用している制作会社やフリーランスデザイナーを公認として認定し、事業を支援する制度「STUDIO Partners」である。

浅田自身、STUDIO Partnersの一社であるgazにWebサイトを発注し、そのUXを自ら体験する中で、「これなら日本ナンバーワンを獲れる」と確信したという。

浅田「まず、めちゃくちゃ安いんですよ。普通は数百万〜数千万円くらいかかるものが、その数分の一でできる。納期も一般的なWeb制作の半分くらいです。0→1の立ち上げを制作会社にやってもらったら、その後のアップデートはユーザーが『STUDIO』を使って直接編集。大幅にデザインを変更するときは、また制作会社に依頼する。そうした“立ち上げは外注、あとは自分たちで”という文化を根付かせ、ユーザー側に自走してもらうプロダクトに進化していければ、自然とユーザー層が拡大しシェアが取れます」

「海外プロダクトとの競争を防ぐ」という点でも、スピーディなシェアの拡大は急務だ。そのためにも、まずは「STUDIO Partners」に注力し、制作会社やプロのデザイナーに向けプロダクトの浸透を図る。

浅田「『Squarespace』もいずれ確実に日本に来るでしょう。それまでに『STUDIO』を一人でも多くのユーザーの手に届け、日本風のノーコード文化を浸透させられれば、マーケットエントリーを防げるのではないかというのが僕の仮説です。日本で『制作会社やデザイナーとのネットワークを構築する』という取り組みをしている海外企業はまだありませんし、Webサイトはメッセンジャーアプリなどとは違い、一度つくると他のツールに乗り換えづらい。だからこそ、いち早く面を取ることが重要なのです」

石井「『誰かの成功を後押しすること』が成功のカギだと考えています。例えば、gazのような会社がより大きな制作会社に成長できるよう支援することで、ロールモデルができ、それに憧れて制作会社をやり始める人も増えるかもしれない。『STUDIO』を中心に、そうした経済圏のようなものを作っていけたらと思っています」

必要なのは、プロダクト志向のチームを補完する「人」

絶え間なく磨き続けられるプロダクト、日本独自の発注文化とそこにあるニーズ、目立った競合が他にないという幸運な市場、数々のSaaSスタートアップをIPOに導いたOne Capital浅田慎二の知見──ピースは揃ってきたが、STUDIOはさらなるスケールに向けて、新たなフェーズに差し掛かっている。

石井「これまでSTUDIOはプロダクトにフォーカスし、かなりの少数精鋭な組織を構築してきました。しかし、これからビジネス的にスケールさせていくためには、プロダクトと事業を両輪で回していくため、チームもケイパビリティも拡張していかなければなりません。例えば、僕も甲斐もプロダクト寄りなので、数字に強い人やオペレーションができる人は不可欠です」

浅田「オペレーティブにビジネスを牽引できる人は確実に必要ですね。例えばパートナー企業を増やしていくにあたっても、制作会社にコンタクトを取って口説くというアクションを遂行できる人が必要です。また、パートナー企業が増えていけば、クオリティコントロールをする必要も出てくるでしょう。

他方で、スケールすればするほど細かい実務設計をして実行する人材が必要になり、人が増えれば増えるほど新たな問題も生まれてくる。それらを踏まえつつ組織を育て続けなければいけません。STUDIOは国内ではまだ経験している人がほとんどいないであろう、真のProduct-Led Growthにチャレンジできる。すごく面白い環境だと思いますね」

その目指す先にあるのは、やはり海外だ。道のりは長く険しいが、ロードマップは既に描けている。

浅田「『グローバルに行く』と言っても、Squarespaceには600億円の年間売上がありますから、いきなりそこへチャレンジするのは、言ってみれば最強の戦闘機であるF15に竹槍で挑むようなもの。ロマンはありますが、もっと現実的に攻める必要があります。具体的には、まずは日本ナンバーワン、その次はアジア。特に東南アジアには、まだSquarespaceが言語対応していない地域も多いですから。そうしてARRというわかりやすい数字を大きくしていければ、それをてこにグローバルの投資マネーを呼び込める。ステップバイステップで少しずつ大きくしながら、最終的にはアメリカのマーケットを獲りに行きたいですね」

石井「いつでも海外で戦えるよう、プロダクトは引き続き磨いていきます。ワンプロダクトで海外に展開できるのが、STUDIOの強みなので。プロダクトはグローバル水準で最高のレベルを目指しつつ、マーケティングはそれぞれの市場に合ったやり方を採用して、きちんとシェアを抑えていく。まさに、浅田さんのおっしゃっていた両輪をしっかりと回していくことを意識しようと思っています」

「自分がほしいものをつくる」
「使っていて楽しいものをつくる」

石井のプロダクトに対する想いは、シンプルだからこそまっすぐに、世界のユーザーの心に響く。浅田慎二という強力なパートナーを得た今、その射程はこれまでよりもずっと遠く、そのスピードはずっと速く。その先には、日本発グローバルSaaSという、まだ誰も見たことのない景色が待っている。

[文]藤田マリ子[取材・編]小池真幸[写真]今井駿介

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デザインの可能性を探究するメディア『designing』のnoteです。事業に寄与するデザインから、クラフト・クリエイティブ、デザイン思想・倫理、広義にデザインと捉えられる活動まで。デザインの多様な側面を深化・探索しながら、その可能性をともに拓いていきます。