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“書く気分を高める”インターフェースを。日本デザインセンターによるテキストエディタ『stone』、App Store1位を獲得

2017年11月30日、日本デザインセンターは"書く気分を高める"テキストエディタ『stone』をリリースした。同プロダクトは日本デザインセンターとしては初の自社プロダクト。Mac版のみの提供で価格は3,000円。App Storeにて提供している。

書く気分を高めるインターフェイス

stoneは機能性や、利便性に長所を持つテキストエディタではない。その特徴はインターフェースデザインにある。ウェブサイト内、コンセプトページには以下のように記されている。

いざ文章を書こうとパソコンを開いても、思うようにはかどらないことがあります。コーヒーを飲んだり、音楽を聞いたりして気持ちを鎮めても、最初の一行が思い浮かばない。上手な言い回しができない。考えがまとまらない。 
なぜでしょうか。私たちはこう考えます。頭の中の想いを定着させる肝心のパソコン画面が煩雑で、使いづらく、集中力を欠くようなものであるからではないかと。鎮めないといけないのは、スクリーンのほうだったのです。
stone(ストーン)は、日本語を書くことに主軸を置いた文章作成アプリケーション。清らかな気持ちで文章を書く。そのために機能は極力そぎ落とし簡潔に、画面はシンプルで、文字が美しくつづられる、「素」のノートに徹しました。

つまり、画面内の要素を徹底的にそぎ落とし、書くこと以外に意識を奪うことがないインターフェースに仕上げでいることがstoneの特徴となる。

入力時は本文以外の要素を全て書くし、書くことのみに集中させる。フォントから行間など、最小限表示されるインターフェースはデザインファーム発のプロダクトらしく、きれいに整えられている。入力されるテキストを目で追っているだけでも気分が良い。

stoneは横書きだけでなく、Macのアプリケーションでは数少ない縦書きにも対応。行ごとの文字数も調整できるため、原稿用紙サイズに合わせたテキストライティングなど、細やかなニーズにも対応する。

日本デザインセンター初の自社プロダクト

stoneを開発する「日本デザインセンター」は、日本を代表するデザインファームのひとつだ。亀倉雄策、原弘、田中一光、山城隆一といった現在の広告クリエイティブの礎を作った人物たちによって1959年に創業された。

現在は代表に原研哉氏が就任、広告分野からVIなどのアイデンティティ、インターフェース、空間、エディトリアル、映像など、媒体を問わずさまざまなデザイン業務に携わる。

『いいデザイナーは、見た目のよさから考えない』の著者で、『アルドノア・ゼロ』のアートワークを担当した有馬トモユキ氏が在籍していることで知っている人もいるかもしれない。

今回のstoneはデザイナー/アートディレクターの北本浩之氏(写真左)と、Webデザイナーの横田泰斗氏(写真右)の二人が担当。

サイト上のインタビューで語っているように、元々は自分自身が従来のテキストエディタではライティングに集中できなかったという原体験が起点になったようだ。

Mac App Store1位を獲得

stoneは2017年の夏頃にベータを行い、最終のブラッシュアップを経て11月30日にリリースした。発売から1週間後の12月7日には、App Storeでの有料アプリランキングで1位を獲得。3,000円という決してテキストエディタとしては安くはない価格ながら順調に売り上げを伸ばしているようだ。

日本デザインセンターにとってstoneは、ビジネス的もひとつの挑戦なはずだ。受託制作会社にとって自社プロダクトは収益モデルを変える1つの手段である。リソースを先行投資する代わりに、(人気が出れば)受注状況や社内のリソース状況に関わらず定常的に売り上げが立つことになる。

ここ数年のトレンドでは、買い切り型より定常的に売り上げの立つサブスクリプションモデルへ潮流は移りつつある。ただ、stoneは初の自社プロダクトということもあり、早期の回収を狙ったと考えられる。同じテキストエディタでも『Ulysses』は今年8月にサブスクリプション化を発表している。

stoneは今後、安定性の向上や機能追加に従事していくことが予測されるだろう。同様のテキストエディタと比較してもクラウドサービス経由の同期機能や、原稿の管理機能、マークダウン記法への対応など追加要望が出るであろう機能は数多存在する。

ただし、stoneは機能面とインタフェース面の両方でそのシンプルさを売りにしているため、機能拡張はかなり慎重になるはずだ。要素が増え複雑になるほどstoneのコンセプトとはずれていく。

その中でいかに、書くことだけに集中させるという本来のコンセプトをぶらさずにいられるか。デザインに特徴を持つプロダクトだけに、今後の動向が期待される。

via stone

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