見出し画像

データ活用に必要なのは、環境づくりとモチベーション管理——THE GUILD勉強会 #theguild_study

2018年8月23日、THE GUILDが主催する勉強会『THE STUDY by THE GUILD』が開催された。

3回目となる今回のテーマは『データ×UXデザイン』。データ活用を第一線ですすめてきた4名が登壇し、講演と、パネルトークが行なわれた。

イベント後半では、データの重要性をチームにどう訴求していくべきか、データを扱える人材をどう育成すべきか、実践を元にしたディスカッションを行われた。本記事ではパネルトークの内容にフォーカスし紹介していく。

【登壇者】
山田智久
アドビシステムズ エクスペリエンスビジネス部 シニアコンサルタント
博報堂アイ・スタジオを経て、2016年2月アドビ入社。デジタルマーケティングプロデューサー経験を活かしつつ、アドビのマーケティングソリューションエキスパートとして、日々、お客様の業務を効率化・売上貢献を実現させるコンサルタントとして従事。

大竹雅登
dely株式会社 CTO/執行役員
1993年、横浜生まれ。dely株式会社、CTO/執行役員。2014年にdelyを共同創業し、CTOに就任。2016年にレシピ動画サービスの『kurashiru』をリリース。2018年現在は累計1200万DLを突破。2017年にはTechCrunch主催の「CTO of the year」を受賞。創業期は社内唯一のエンジニアとしてフルスタックに開発を担当し、サービスと会社の成長に伴ってエンジニア組織やデザイン組織を作ることに注力している。

鈴木陽介
日本経済新聞社 デジタル事業BtoCユニット
2001年日本経済新聞社入社、ウェブサイトの運用・編集・記者、新聞記者などを経て2009年から日経電子版の企画開発に関わる。2011年ごろから社内エンジニアによる開発の内製化を主導、初代スマホウェブ版や「爆速化」したウェブ版を担当。2017年データドリブンを加速するための教育制度「データ道場」を開始。現在は機械学習・AIのプロジェクトを管轄しつつ、社内の開発環境の改善や社内人員のトレーニングに取り組んでいる。

安藤剛
THE GUILD / UX Designer
大手SIerにて大規模システムの提案・構築、海外事業開発等を歴任後、米カーネギーメロン大学の言語学者達と検索エンジンベンチャーの設立に参画。2012年よりTHE GUILDを創業し、UX・UIデザイン・エンジニアリング・データアナリティクスの領域を中心に活動。2016年より動画ストリーミングサービス「U-NEXT」のデザイン技術顧問としてサービスの成長を支援。

サービスのグロースを求める中、データの重要性に気づく

データ活用の最前線で活躍する彼らだが、誰もがはじめからデータドリブンな視点を持っていた訳ではないのかもしれない。
今回登壇した4名はプロジェクトを通してデータの重要性に気づき、実践を繰り返してきた。

トークの冒頭では、それぞれがデータを意識するようになったきっかけが話された。

鈴木 陽介氏(以下・敬称略):データとの出会いは、日経に入社して記者・編集者として働いたころです。といっても、まだ2001年頃で日々のPVを見ているくらいです。当時はbotやクローラーが出現しはじめた時期で、実際の3倍のアクセスログが出てしまうなど、正確さにも問題がありました。ただ、数字を見る意識はこの頃から持つようになったのかも知れません。

安藤 剛氏(以下・敬称略):私はファーストキャリアがSIerで、企業のデータをインデックスする業務に携わり、「どうやったら0.01秒で検索結果を出せるか」といった課題に取り組むことがありました。その中で、パフォーマンスを向上させるために、ログを取り、ボトルネックを探し、改善を繰り返す経験を積みました。そのプロセスは、現在取り組んでいるサービス改善のプロセスと似ています。作業自体は、パフォーマンスをチューニングするという地味な作業なのですが、私はそれが好きでのめり込んでいましたね。

大竹 雅登(以下・敬称略):僕はクラシルをどう伸ばしていくかを考えるために先人の知恵を借りにいったのが大きなきっかけでした。Gunosy CTO松本さんに相談したところ、「数字取ってるの?どこの数字を取ってるの?」と聞かれたんです。僕は「GA入れている位で、そこまで追えていません」と答えたんですが、「それじゃあ伸びないよ」と言われたんです。「より細かく、ユーザーの行動を知らないと、目隠しをして走っているようなものだ」と教えてくれました。それをきっかけに自社のデータ基盤を作りました。

山田 智久(以下・敬称略):僕は高校生のころから数学に苦手意識を持っていたので、データの重要性を認識するようになったのも20代後半と、少し遅めです。きっかけはある企業のSNS運用をしたときでした。跳ねた投稿のよかったポイントを要素ずつに分解して計測しているうちに、データを使いこなせば良い成果が出せるということを学び、そこから積極的に学ぶようになりました。

データを使う人が増えるような仕組みづくりをする

続くパネルでは、「データを会社の中でどう活かしているのか」が語られた。メンバーを集めるのもひとつ、ダッシュボードを整えるのもひとつ。それぞれのやり方を見ていこう。

山田: 私の場合社内というよりは、クライアントワークでお客様のデータを見るのですが、お客様のデータに関しディスカッションをする文化は強いと思います。「こういったニュースがあるとこう変化した」「こういうキャンペーンがこんな影響を与える」と日々ディスカッションし、知見に落としています。

大竹:クラシルの場合は、前述の話からデータを元に事業を伸ばすことを前提条件にし、仲間を集めるうえでもそれを意識しました。文化として当たり前に根付いている状態を体現したんです。社内ツールも、先進的なものを早い段階から使っていたように思います。特にデータソース管理ツールのRedashは、Gunosyに倣って早々に取り入れました。

安藤:THE GUILDはクライアントワークなので、クライアント環境下での話になります。たとえば4~5年に渡り技術顧問をしているU-NEXTさんは、初期はデータドリブンな会社ではありませんでした。データを活用することの大切さを伝え続け、徐々に変化が生まれ、今はかなりデータにも力を入れるようになりました。メンバーも増え、データサイエンティストが6人、データストラテジストが4名の体制でデータ活用に取り組んでいます。

鈴木:日経電子版の場合は、Atlasという自社のデータ基盤に集積したデータを吸い出し、さまざまなツールで見られるようにしています。ダッシュボードも自社で作り、1フロアに2〜3個置いたディスプレイで表示させています。他にも、DOMOというビジネスインテリジェンスっていうダッシュボードツールも使っています。データ基盤やアプリが内製化したことで、データを活用する時のスピード感がよくなりました。しまっておきがちだったデータを、常に見ることが当たり前になってきています。

データ活用を普及させるための、モチベーション管理

データを使いやすい環境が整ったところで、それを実際に使うのはチームメンバー各々だ。より実践レベルで使ってもらうために、各社どのような工夫をしてきたのだろうか。

鈴木:先述の通りですが、常時、データをディスプレイに表示させておくことでしょうか。社内には、データを自ら直接見ることのない職能の人もいますから。そういう人にも伝わりやすいようにはしています。あとは社内ブログを使って、「データを使ってうまく施策できました」という成功事例を共有しています。

安藤:THE GUILDの中ですと、定期開催している社内勉強会や、データ部会っていう部活動的な場で、ディスカッションをおこなっています。週に一度開催しているデータ部会は、4~5人の有志が集まり、「某サービスがなぜ優れているのか」といったテーマを設けて分析したり調べたりしています。「データ」「統計」という言葉に苦手意識を持つ人は少なくありません。でも実際はそんな難しい話ではない。THE GUILD社内ではそれを伝えるために、小さくても面白い発見があったら共有するようにし、その際は苦手な人でもとっつきやすいようわかりやすく伝えるようにしています。

大竹:普通かもしれませんが、delyでは成功事例をSlackで伝えるようにしています。数字をみると喜ばしいことがあるという印象を植え付ける意味もありますね。特殊なものでは、他社さんに許可を得てデータを教えていただき、それを社内限定で公開しています。他社と自社のデータを比べると、メンバーも興味をもちやすくなるし、見るのが楽しくなりますよね。競合関係にある企業でなければ意外と教えてくれるところもあるんです。

山田:動機付けは重要ですよね。その点ではふたつの取り組みがあります。ひとつは安藤さんの話にもあったデータの見せ方です。データを見るとき多くはWebブラウザ上で見ますよね。それを僕らはA3の紙一枚で表現するようにしています。50枚ぐらいのレポートを並べても、人はそれをなかなか覚えられません。ひとつの紙に分かりやすくまとめると少し気が楽になります。

もうひとつは、社内でデータを見るのが上手な人には、「この人はデータを見ることができる人ですよ」っていうのがわかる称号を付与しています。社内の認定制度とはいえ、興味を持つ人も出てきました。

鈴木:日経の場合は、データを扱える人材の育成は幅広めにスタートしています。目星をつけた人とデータの相性は当たり外れがありますから、たくさんの人に投げてみて、5人に1人でも当たればいいという考えです。

山田:データに関するスキルを身につけてほしいと、会社から働きかけをしたんですか。

鈴木:データが大事だという話はするようにしていました。スキルの身に着ける場としては、社内に「データ道場」という学べる機会も用意しています。

大竹:データの扱い方を習得してもらうといっても、いきなりSQLを書いてもらうというのは、相当なハードルです。私たちはまずBIを導入し簡単な変数を入れれば、必要なデータを呼び出せるようにしました。データを見やすい環境を作ってあげれば自然と興味を持った人が現れる。それを入り口にSQLに取り組み始めてくれる人も出てきました。

分析をする目的の明確化と、下準備が重要

データはあらゆる角度から分析ができるし、分析には明確な終わりがない。第一線で活躍する彼らは、どんな軸を設けて分析をしているのだろうか。
最後のパネルでは、それぞれの考える分析する上で大事にしていることが語られた。

山田:私は、指標と仮説を明確にするまでは、データを見ないようにしていています。それは、何のために見ているかわからなくなってしまうから。他の人に分析タスクを振るときも、目的と目標をブレイクダウンしてからお願いしています。

大竹:delyでは分析結果をできる限りセンセーショナルな文言をつけて社内に共有しています。「金脈がありました!」とか(笑)。あとはデータをSlackで共有するときに、関係のありそうな人にはメンションをつけています。すると、理解を深めるためのディスカッションが自然と生まれますよ。

安藤:THE GULIDはお客様からいただいたデータを分析することが多いのですが、分析は意思決定のためにやるもだと考えています。逆に言えば、成果を産まないデータ分析はやらないほうがいい。デザインの場合だと90%の完成度でも納品することは可能ですが、データ分析の場合は頂いた報酬に見合う結果を出さなければなりません。そういうところは緊張感を持ってやっています。

山田:データの分析後に、伝えるほどの価値のある結果が見つからなかったときはどうしていますか?

安藤:答えにはなってないのですが、最近ある企業のBIのトップの方に同じことを聞いたところ、「何もないことがわかった」と伝えるそうです。いくつかある選択肢の中から、「ここは違う」という学びを得た、と。もちろん、私たちの立場だとそれはできませんが(笑)。

鈴木:調査の前段階でしっかり準備してくことが重要だとおもいますね。日経の場合、分析後に手応えがなかった場合は、意図的に違う視点でデータを見るようにしています。たとえば読者のエンゲージメントレベル別でみると結果が見えることがよくあるんです。ただ視点を後付けするよりも、後付けが必要なくなるようにすることが大切ですから。なぜデータを使うのかという準備は欠かせませんね。

登壇者たちのエピソードからは、データの活用がクリエイティブ領域でも求められはじめているということが垣間見られた。BIや計測手法は発達し続けている。データを見る習慣や、分析に対する知見を身につけておく必要性は今後専門職以外にも求められていくだろう。

text: Yuuka Maekawa
写真提供:THE GUILD

この記事が気に入ったら、サポートをしてみませんか?気軽にクリエイターを支援できます。

note.user.nickname || note.user.urlname

最後までお読み頂きありがとうございます。 取材依頼/リリース送付/スポンサードコンテンツ/その他ご相談等は press@designing.jp まで御連絡いただけると嬉しいです。

18

デザインビジネスマガジン"designing"

designingはデザインとビジネスの距離を近づける"デザインビジネスマガジン"です。ビジネスパーソンがデザインに関心を持ち、デザイナーがビジネスを理解する機会提供をコンテンツを通して行い、社会のデザインリテラシー向上を目指します。

デザインビジネスマガジン"designing"

designingはデザインとビジネスの距離を近づける"デザインビジネスマガジン"です。ビジネスパーソンがデザインに関心を持ち、デザイナーがビジネスを理解する機会提供をコンテンツを通して行い、社会のデザインリテラシー向上を目指します。
コメントを投稿するには、 ログイン または 会員登録 をする必要があります。