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designing|デザインビジネスマガジン

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デザインの可能性を探究するメディア『designing』のnoteです。事業に寄与するデザインから、クラフト・クリエイティブ、デザイン思想・倫理、広義にデザインと捉えられる活動ま… もっと読む
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#書評

デザイン読書補講 14コマ目『自分の〈ことば〉をつくる あなたにしか語れないことを表現する技術』

こんにちはこんばんは、吉竹です。 この『デザイン読書補講』は「デザインを学び始めた人(主に学生)の世界を少しでもひろげられるような書籍をおすすめする」をコンセプトに連載しています。 わたしの自己紹介や、この連載が生まれた経緯は1コマ目『UX・情報設計から学ぶ計画づくりの道しるべ』で書いていますので「どういう人が書いているんだろう?」と気になった方は合わせて読んでみてください。 今日の1冊デザイン読書補講14コマ目にご紹介するのは、細川英雄『自分の〈ことば〉をつくる あな

デザイナーとは二律背反である──書評『行政とデザイン』

いま、行政の世界でデザインが注目を集めている。 「デザイン」という言葉の及ぶ範囲が広がるにつれ、「デザイナー」はさまざまな分野で活躍するようになった。その影響力は今後も増していくはずだ。たとえば2020年のLinkedInの調査では、UXデザイナーはアメリカで「需要のあるハードスキル」のトップ5に入ったという。「行政とデザイン」も、デザイナーの活動範囲が広がっていることの証左と言えるかもしれない。 「行政とデザイン」という組み合わせを聞くと、まるで「水と油」のような感覚を

デザイン読書補講 13コマ目『評伝 フィリップ・ジョンソン 20世紀建築の黒幕』

こんにちは。中村として5回目のデザイン読書補講です。前回、柳宗理さんに触れながら、その生没年が20世紀をほぼそのまま飲み込むかたちゆえ、個人史と20世紀史、そして近代デザイン史が重なる凄みのようなものをおぼえました。そうしたなか、ふと、より強力に20世紀史と結びついている人物を思いだしたのです。 フィリップ・ジョンソン。1906年に生まれ、2005年に98歳で没した建築家。ふと、いまなにげなく建築家という肩書きをならべましたが、もしかするとそれ以前の肩書きでもあったキュレー

デザイン読書補講 12コマ目『不便益という発想』

こんにちはこんばんは、吉竹です。 この『デザイン読書補講』は「デザインを学び始めた人(主に学生)の世界を少しでもひろげられるような書籍をおすすめする」をコンセプトに連載しています。 わたしの自己紹介や、この連載が生まれた経緯は1コマ目『UX・情報設計から学ぶ計画づくりの道しるべ』で書いていますので「どういう人が書いているんだろう?」と気になった方は合わせて読んでみてください。 今日の1冊デザイン読書補講12コマ目にご紹介するのは、川上浩司『不便益という発想〜ごめんなさい

言葉が、サービスに「人と人のコミュニケーション」を宿す──書評『UXライティングの教科書』

デザインにおけるライターの役割とはなんだろう? UXデザインの隆盛にともない、その言葉が指し示す領域は拡張しつづけている。「UXライティング」という、ともすると聞き慣れないこの言葉も、UXデザインが細分化した一領域として注目を集めはじめている。 UXライティングとは、基本的な思想をUXデザインと共有しつつ、それを“言葉のちから”によって成し遂げようとするものだ。これは特別に新しい概念でも取り組みでもない。この言葉が登場する以前から、実質的に「UXライティング」に従事してい

デザイン読書補講 11コマ目『CasaBRUTUS 柳宗理』

こんにちは。中村としては4回目のデザイン読書補講となります。今回のテーマは前回のデザイン読書補講を終えて、ふと思い出したものを扱います。 いまから10年前の年暮れ。まだはじめて間もなかったあるSNSをみていると——My Dear friend and teacher Sori Yanagi has passed away this Christmas day——と、ひとりのデザイナーの最期が綴られていました。柳宗理(1915—2011)さん。日本を代表する工業デザイナーであ

デザイン読書補講 10コマ目『わかりやすい民藝』

こんにちは。中村としては三回目のデザイン読書補講となります。 はやくも年末にむかう季節となりました。もしかするとこの年末年始には、しばらくぶりの旅にでられる方も、なかにはいらっしゃるかもしれません。様々な地をめぐるとき、ならではの食を口にすることはもちろん、その場の空気や風土に身をゆだね、地域の物々に触れるのは、ひとつのたのしみです。 そうしたとき、ふと民藝という言葉が浮かぶ方もいるでしょう。近年、いっそう目にするようになった印象もある「民藝」。地方・地域といったイメージ

デザイン読書補講 9コマ目『担当になったら知っておきたい「プロジェクトマネジメント」実践講座』

こんにちはこんばんは、吉竹です。 この『デザイン読書補講』は「デザインを学び始めた人(主に学生)の世界を少しでもひろげられるような書籍をおすすめする」をコンセプトに連載しています。 わたしの自己紹介や、この連載が生まれた経緯は1コマ目『UX・情報設計から学ぶ計画づくりの道しるべ』で書いていますので「どういう人が書いているんだろう?」と気になった方は合わせて読んでみてください。 今日の1冊さて、デザイン読書補講 9コマ目にご紹介するのは伊藤大輔『担当になったら知っておきた

成功する「協働」と失敗する「協働」は何が違うのか?——書評『コ・デザイン』

「デザイン」という言葉は、一般的に見て敷居が高く感じられるものらしい。曰く、デザイナーといえばクリエイティブな存在であり、センスが良くなければなることができない−−そういう認識を持つ人は、いまだに少なくない。 たしかに、特別な才能に恵まれた(かのように見える)スターデザイナーがいるのは間違いない。その一方で、デザインという言葉がさまざまな文脈で用いられるようになり、デザイナーが関わる領域も増えつつある今、デザインは一部の人だけが専有するものではなく、全員が関わるものになりつ

デザイン読書補講 8コマ目『陰翳礼讃』

こんにちは。中村です。僕が担当する『#デザイン読書補講』の2回目となります。前回は、中村好文+神幸紀『パン屋の手紙』(筑摩書房)をあつかい、デザインはだれによって、デザインされるのか——そうした「そもそも」のことについて、つくり手たる建築家と、クライアント、そして場の関係性ついて、考えてみました。 さて今回は、少し時間をさかのぼり、昭和初期に記された書物を紹介します。しかも、デザイン関連の人が書いた文章ではありません。谷崎潤一郎『陰翳礼讃』——そう、近代日本文学を代表する人

創造性をもたらすのは、2つの「余白」である——書評『コンテクストデザイン』

「余白があること」と「白紙であること」は同じではない。 何かを書くとき、あるいはつくるとき、何も制限されないまったくの白紙から始まることは、そうそうないはずだ。 どんなテクスト(創作物)も、そこにはコンテクスト(文脈)がある。創作物は多かれ少なかれ、何らかの文脈に立脚するものだ。いかに独創的に思えるものでも、何もないところからは生まれない。豊かなテクストが生まれるためには、肥沃なコンテクストが必要だ。コンテクストとは栄養であり、テクストがその生成物である。 本書『コンテク

デザイン読書補講 7コマ目『「カッコいい」とは何か』

こんにちはこんばんは、吉竹です。 この『デザイン読書補講』は「デザインを学び始めた人(主に学生)の世界を少しでもひろげられるような書籍をおすすめする」をコンセプトに連載しています。 わたしの自己紹介や、この連載が生まれた経緯は1コマ目『UX・情報設計から学ぶ計画づくりの道しるべ』で書いていますので「どういう人が書いているんだろう?」と気になった方は合わせて読んでみてください。 そういえば5コマの最後に執筆メンバーが1人増えますと予告したとおり、前回より帝京平成大学の中村

批判こそが「意味」を研ぎ澄ます——書評『突破するデザイン』

贈り物をするのは、「つくる」という行為を通してのみ可能である。意味を創造する究極の喜びを楽しむのも、「つくる」という行為を通してのみ可能である。贈り物は人々のためであるが、贈り物をつくる行為は私たちのためだ。(p.306) 「誰かのため」という言葉や想いに反論するのは難しい。利己的な姿勢は、当然ながら(多くの場合)たしなめられる。私たちに求められるのは、自分の発想や感性を押し付けるのではなく、相手が何を求めているのかをしっかりと把握することだ。さもなければ、単なる独りよがり

デザイン読書補講 6コマ目『パン屋の手紙——往復書簡でたどる設計依頼から建物完成まで』

はじめまして。中村将大ともうします。ふだんはデザインの教育を中心に仕事をしています。すでにこの『デザイン読書補講』で、連載をされている吉竹遼さんと、これから月ごとに交代しながら記事を更新していきます。デザインの実用書はもちろん、それをささえる教養となるもの、視点や考えのヒントになるものなどなど、いわゆるデザイン本に限らず、紹介していこうと考えています。みなさんがデザインに携わるどこかで、この記事がお役にたてましたら、うれしいです。 さて、この『デザイン読書補講』は、デザイン