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designing|デザインビジネスマガジン

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デザインの可能性を探究するメディア『designing』のnoteです。事業に寄与するデザインから、クラフト・クリエイティブ、デザイン思想・倫理、広義にデザインと捉えられる活動ま… もっと読む
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2021年3月の記事一覧

デザイン読書補講 3コマ目『具体と抽象 ―世界が変わって見える知性のしくみ』

こんにちはこんばんは、吉竹です。 この『デザイン読書補講』は「デザインを学び始めた人(主に学生)の世界を少しでもひろげられるような書籍をおすすめする」をコンセプトに連載しています。 わたしの自己紹介や、この連載が生まれた経緯は1コマ目『UX・情報設計から学ぶ計画づくりの道しるべ』で書いていますので「どういう人が書いているんだろう?」と気になった方は合わせて読んでみてください。 今日の1冊 デザイン読書補講 3コマ目にご紹介するのは、細谷功『具体と抽象 ―世界が変わって見

デザインリサーチは創造性を育む「しばりプレー」——書評『デザインリサーチの教科書』

「デザインリサーチ」という言葉を、どれくらい正確にご存知だろうか。 本書『デザインリサーチの教科書』によると、日本だとまだあまり聞き慣れないこの概念は、すでに欧米では一般的な手法となりつつあり、専門職としてのデザインリサーチャーの需要は高まるばかりだという。一方で日本では、まだまだ体系化が進んでおらず個々のデザイン会社、デザイナーが手探りでおこなっている状態と著者は述べている。 実際、UXデザイン、組織デザイン、業務デザインなど、デザインの対象は年々拡がり続けている。それ

イノベーションデザインを民主化せよ——NEWh神谷憲司

日本でも政府を挙げて推進する対象となり、もはや誰もが知る言葉となりつつある「イノベーション」。1912年にオーストリアの経済学者ヨーゼフ・シュンペーターによって提唱されてから一世紀以上、かのピーター・ドラッカーやクレイトン・クリステンセンなど、数多くの識者たちがそのメカニズムについて思索を重ねてきた。 しかし、未だその探求は発展途上。そんな中、「デザイン」の方法論を応用し、イノベーションの創出に挑んでいる人物がいる──2021年1月、“イノベーションデザイン”に特化したデザ

【翻訳】UXデザインの力を信じるために、私たちが考えるべきこと

チョウチンアンコウが小さな突起物で小魚を捕まえ、腹を満たすように。巨大テック企業はUXによってユーザーを搾取し、利益を得ている。日本のデザイン界隈でも話題になった記事『Why I’m losing faith in UX 』で、Mark Hurst氏はUXへの落胆を表しました。 彼に返信を送ったのが、Scott Berkun氏。MicrosoftやWordPressでUIやUX、エンジニアリングに携わり、デザインやクリエイティビティをめぐる複数の著作でも知られています。『H

組織のプロたちは、あえて“組織の定石”を無視した——MIMIGURI誕生の足跡

2021年3月15日、ミミクリデザインとDONGURIは合併し、株式会社MIMIGURIとしてスタートすると発表した。資本業務提携に伴う横断経営を発表したのが、2020年3月3日。わずか一年足らずで、両者は「一つのチーム」となる意思決定をした。 しかし、その実を聞くと「組織作りのプロ」がやるとは思えない話が聞こえてきた。 「合併へ向かうには、ホールディングス化を経て段階的に」が定石にも関わらず、資本業務提携から一年足らずで、一切の段階を踏まずに合併を選んだ。 「社名には

デザイナーではなく、デザインを探究し続ける“観測者”でありたい——DONGURIミナベトモミ

DeNA、ビズリーチ、クックパッド、エムスリーのデザイン組織やPdM組織推進。Wonde等のライフスタイルプロダクトの事業開発、FiNC等のサイトリニューアル……。ある「デザイナー」が率いる企業が支援したプロジェクトの一例である。 その企業の名は、DONGURI。創業者のミナベトモミ氏は、家電メーカーのプロダクトデザイナー、フリーランスを経て、DONGURIを設立。世界的なアワードでの受賞歴もありプレイヤーとしての成果も積み上げる一方、活躍のフィールドをデジタルから事業、そ

コイニー創業期を支えた二人が語る、“1”を生み出す猪突猛進の姿勢:連載「0→1デザイナー」第1回

本記事は、Mimicry DesignとDONGURIが運営する、組織イノベーションの知を耕す学びのメディア『CULTIBASE』との共同企画です。本記事は双方の媒体に掲載されています。 サービスの立ち上げと成長フェーズでは、デザイナーに求められる素養もスキルも異なります。特にプロダクトの0→1を支えるデザイナーには、何もないところから、事業の根幹を見極め、形にしていく様々な力が求められるでしょう。 いま名を知られるサービスは、どのように0→1を乗り越えてきたのか。創業期

「衝動」に忠実に、問いと遊びをデザインし続ける——ミミクリデザイン安斎勇樹

デザインが価値を発揮する領域は、ますます広範囲になってきている。経営、事業、構造、組織——。さまざまなファクターが複雑に絡みあった難題にこそ、デザインの力が求められている。 そんな中、「問い」にデザインを応用するのがミミクリデザインCEOの安斎勇樹氏だ。資生堂のビジョン浸透にや京セラの新規事業創出、シチズン時計のインナーブランディングなど、数々の集団の創造性を引き出し、複雑な課題解決をファシリテートしてきた。 他方で、東京大学大学院情報学環特任助教としてワークショップデザ